2014年8月22日金曜日

シュガーマン


音楽の話題をもう一つ。

最近、お客様に勧められて「シュガーマン 奇跡に愛された男」原題Searching for Sugar Manというドキュメンタリー映画を観ました。非常に面白く、いろいろ考えさせられました。

1970年代初頭に、二枚のアルバムを残してアメリカの音楽シーンから消えてしまったヒスパニック系シンガーソングライターのストーリー。
それだけなら世の中に無数に転がっている話の一つに過ぎないのですが、このロドリゲスという名前のシンガーが残したアルバムは、時を経て南アフリカで大ヒットします。メッセージ性の強い彼の曲は、反アパルトヘイトの象徴としてヒットしたのです。
南アでローリングストーンズより有名なシンガーとなったロドリゲス、でも誰も彼のことを知らない、それどころか生きてるのか死んでるのかさえわからないのです。

物語は一人のファンがロドリゲスを探す過程を軸に関係者のインタビューを交えつつ進行します。

観終わって、彼が残したアルバムが聴きたくなりました。アマゾンで検索したら二枚ともCDで売っていたので、迷わず購入。さっき届いてさっそく聴いています。

どちらも素直に良いアルバムです、馴染み易いメロディーに魅力的な声がとても良くマッチして、内包するプロテスト性を忘れさせる心地いいサウンドです。
プロモーションの失敗、時代のニーズその他諸々音以外の問題が、このレコードをセールス的敗北に導いたんだなと思います。

でも一番の問題は、ロドリゲス当人がポップスターになりたいという明確な意志を持っていなかったんじゃないか、ということでしょう。

彼がいかに独自の哲学や価値観を有していたかは映画の中で幾度となく語られます。

最初、不幸にもポップスターになれなかった男の話だと思って観始めたけれど、実はあえてポップスターにならなかった男の話なんだと納得しました。

それが僕が彼のCDを聴きたくなった一番の理由です。

ちなみにタイトル曲シュガーマンは、麻薬売人の話です。